Interop Tokyo 2016 参加メモ
3年ぶり3回目。今年も幕張メッセで開催されたネットワーク関連のテクノロジーとビジネスのリーディングイベント、Interop Tokyoに参加してきた。
I know it works because I saw it at interop.
Interopの原点、ここに来ればわかる、と。ネットメディアのレポートではなく実際に動いているところを自分の目で見たいのだ。Interopに参加する理由などこれ一つで十分である。
ShowNet、今年もInternetの縮図が幕張メッセに構築された。今回もこれを見るために参加したようなものだ。最新鋭の機器、製品、技術が贅沢に用いられたライブデモンストレーション。前回参加したのは2013年、その時のShowNetから大きく進化していたように思う。今回はShowNetウォーキングツアーにも参加した(その分他の展示や講演に割く時間は減ってしまったけど)。
ShowNetでは、「今の設計や運用方法で10年後も安定的なインターネットサービスを提供できるのだろうか?」という問いかけのもと、2014年にグランドテーマとして "Scratch & Re-build the Internet" を掲げました。その後、良きモノを継承しながら、新しいテクノロジーを活用して再構築する取り組みを、3年かけて行ってきました。
今回構築されたネットワークは約74億円分の機器のコントリビューションを受けているとのこと。
1番ラックは幕張と大手町(インターネット)を繋ぐ伝送機器
ルートリフレクタ
各ラックの隣には"さくらのIoT Platform"と書いてあるいいねボタンが設置されていた。これを押すとShowNetのクラウドで投票集計してくれるらしい。Web制作系の展示イベントによくあるような、展示の横にiPadかなんかを置いて投票ツールを操作してもらうような方法はもう既に前時代的ということなんだろう。
NTPより細かいマイクロ秒の精度で時刻を同期するPTP(Precision Time Protocol)プロトコルの相互接続を検証している。また、セイコーソリューションズのNTPサーバ(TS-2850)によりShowNet全体の時刻同期の土台を担っている。デジタル時計も日本が誇るSEIKO製。
今年のInteropは「セキュリティ」もキーワードの一つということで、セキュリティ関連の説明も豊富に聞くことができた。ここのラック内で複数のベンダー製品を組み合わせてセキュリティ機能を実現している。攻撃を検知するとファイアウォールやルータ機器に対してACLなどのフィルタ設定が動的に施される。各機器への設定方法は多様で、BGP FlowspecやREST APIで設定できるとのこと。SDN/NFVについての技術的なことはまだほとんど知らないので勉強しておきたい。
こちらは、モニタリングツール(Zabbix)が動いていたり、Hadoopでsyslogから送られてきたデータを解析しているとのこと。異常検知のモデリングとかかな。
このあたりはWeb系のソフトウェア屋でも理解しやすい話は多かったように思う。
SDNソフトウェアスイッチLagopusの上にNetFPGAのボードが裸で付けられている。このFPGAによりOpenFlowの負荷分散を図っているとのこと。確かにハッシュ計算部分などはFPGAが活躍しやすい領域だしデモとしては上手くいっているのだろう。もっと広範囲にFPGAが活用されると楽しくなりそうだ。
今年はShowNetのBackyardも特別公開されている。
ShowNetが美しいのはネットワークトポロジー図だけではない、物理的な裏配線も非常に美しく無駄がない。ただ個人的にはもっとごちゃごちゃしてた方がなんとなくロマンがあるかなと思う。まぁ廃熱効率とか考えたら綺麗であるのに超したことはないのだけど。
普段は決して目立つことがない電源ケーブルにも賞が与えられる。メーカーにとってはモチベーションが上がるだろう。担当者が寄ってきたので少し話したんだけど、なんとこのケーブルはうちの会社でも採用実績があると言っていた。1本20kgまで耐えられるらしい。
所変わって、今年はTokyo Cloud Congressという特別企画の記念すべき第一回目。10日の基調講演の目玉イベントとなっていた。
内容としては、IoTソリューション市場全体の紹介やクラウドコンピューティングの登場による新たなビジネスモデルの話、そしてオープン化。Web屋にとっては特に目新しい内容ではなかったが、ここはInterop、ハードウェアベンダーが集うこの場所においては画期的・進歩的な展望の話のように思う。産業界の垣根を超え、ビジネスにおいてもこれまでよりも強いパートナーシップを発揮して、各企業が相互に技術を共有し合っていく必要性を説いていた。プロダクトをオープンソースにしたら終わりという話でもないのだろう。今回は各企業のリーダーが一人一人講演していくスタイルだったけど、次回以降はパネルディスカッション形式で各ベンダーの意見を交えて議論して欲しいなと思った。
ちなみにムーアの法則はまだ当分は有効だと言っていた。権威論証的ではあるけどIntelの偉い人が言うのだからきっと正しいのだろう。
さて、展示に戻ろう。
AmazonのIoT
Amazon Dash Button、これは商品に紐付けたワンクリック注文のハードウェア版のようなもの。日用品が無くなったらこのボタンを押すことで注文されるという仕組み。IoTのシンプルな一つの形だ。実物を見たのは初めて。
YAMAHAのネットワーク機器の展示。去年ではあるが、YAMAHAのネットワーク機器は誕生20周年を迎えたらしい。
この機器はIPsec等のエンタープライズ向け機能も搭載されているとのこと。そこそこの規模、多様な拠点でのオフィスネットワーク構築にも最適だろう。あと、YAMAHAだからVoIPの音質にもこだわってるんだろうなとか安直なことを思ったりした。
参考出展の企業向け無線LAN AP X-15
YAMAHAはもうすぐ Yamaha Network Organizer(YNO)というクラウド型のネットワーク管理サービスを始めるらしい。クラウド上で複数のネットワーク機器を一元管理できるほか、設定情報の保管や機器の設定変更、ファームウェア更新もすべてクラウド上でコントロールできるという今時のサービスだ。YAMAHA製品のGUIは使いやすいと評判が良いし、このサービスも高い品質を期待できそうだ。周りのベンチャーに勤める知人からも、社内ネットワーク構築にはYAMAHAのルーター製品を使っているという話はよく聞く。故障は少ないしCisco製品と比べれば安いので評価が高いのは頷ける。
A10 Networks、AXシリーズにはいつもお世話になっております。
ストレージ関連の展示も多かった。こちらはQNAPの製品。
拡張性が高いQNAP製品で家庭用NASを構築したことがあるエンジニアも多いのではないだろうか。僕も2年くらい前まではQNAPのストレージを使っていた。今はSynologyだけど。また、ストレージ関連ではSDS(Software Defined Storage)の普及も注目したいところ。展示としてはScality RINGなどの紹介を受けた。
D-Linkは創立30周年。
壁埋め込み型のWi-Fiアクセスポイント DAP-1850AC が面白い。JIS規格の情報コンセントにぴったり収まる小さなサイズで、802.11ac、2.4GHz/5GHzのデュアルバンド対応となっている。無線だけでなく有線LANも繋ぐことができる。値段もお手頃なのが良い。
また、今回は併設イベントのデジタルサイネージジャパン(DSJ)とAPPS JAPANも少しだけ見て回ってきた。
サイネージ制作もWebベースで、今だとHTML5で作られることも多いと聞いて驚いた。そもそも従来はどうやって作っていたかも知らないのだけど。六本木駅のホームにあるサイネージもそうなんだろうか。また、写真は撮り忘れたけどDSJではNikonなどの光学機器メーカーの出展もあった。
こちら、W3Cも二十周年とのこと。
WebRTCを使って小さな車(?みたいなものを動かしていた。
Web Browsers - A Historical Archive - として、Webブラウザ発展の歴史が紹介されていた。
NeXT Cube上で動く、世界最初のブラウザ WorldWideWeb
かわいい
HotJavaやMosaicなどがインストールされている、参加者が自由に触れるWindows PCが数台設置してあった。
Netscape、これは僕が学部の2年の時までSolarisのワークステーション上で使っていた。3年からはOSはLinux(Debian)、WebブラウザもFirefoxに変えた記憶がある。もちろんFirefoxは今でも便利に使わせてもらっている。
SPARCstation IPX、僕は使ったこと無いけど大学の研究室に置いてあった記憶がある。動いているところを見たのは初めてだ。
NetscapeでYahoo Japanのトップページを開いてみた。ニューストピックスはなんとか表示されてるようだ。
同様にMosaicでYahooを開こうとしたらブラウザが落ちた。何度やっても落ちる。どうやらWindows10上でエミュレーションしているらしい。
3日目は他の2日よりも1時間早い17:00で終了なので、展示を見て回る時間が少なかったという印象。15:00以降はShowNetも人だかりが少なくなっていたので見学しやすかった。
今年のノベルティ戦利品。まぁまぁかな。
今年のInteropも充実していた。ネットワークエンジニアでない僕ですらこれほどワクワクしたのだから、本職の人はどれほど心躍ったことだろう。未来のインターネットインフラを支える基盤技術を堪能した一日だった。来年もぜひ参加したい。
「いつでも・どこでもつながるインターネットへ」
IoTが以前よりも注目されるようになり、PC/スマートフォン以外の様々なハードウェアもインターネットに繋がっていく時代になった。“Interoperability ”(相互接続性)がInteropの名前の由来になっているが、この相互接続性の問題もIoTの普及に伴って様々な問題が浮き上がってくるのだろう。それらの問題を解決するために、従来のIT系以外のエンジニアが活躍する場も増えて、さらなる雇用に繋がっていけば将来は明るいのではないだろうか。